■先日、Twitter上で話題になった「ナルルで舞踏会が開かれていたら?」という話に便乗してみました。
ほぼ100%妄想になります。そして落書きクオリティ。一応注意を。



日も暮れた王宮前通り。ひとり、ドレス姿の女性の姿があった。
ふ、と王宮の方を見れば、楽団の奏でる音楽と内容は分からない談笑が遠く聴こえる。

「ルーインくんの、馬鹿。」

彼女――ジルは、ぽつりと待ち人の名を呟いた。
『一緒に、行ってみたいなぁ』
そう言ってくれたのが、嬉しかったのに。約束の時間は、とうに過ぎていた。
唇を噛んで見下ろしたのは、思い切って新調した藍色のシンプルなドレス。
首に水色と月光色のケープ、頭にはレムの花で作った髪飾り。
いつもはしない、精一杯のドレスアップだった。

帰ろうか――そんな幾度目かの考えがよぎった時。


「じっ、ジルちゃん!」

ようやく現れた待ち人の姿に、怒っていたのも忘れてくすり、と笑む。
一応は気を遣ったらしい紺のジャケットで、普段通りにわたわたと駆けて来るのがおかしくて。
「ごめん、待ったでしょう!?」
「ええ、それはもう」
ごめん、と謝りたおすルーインが、不意に持っていた包みを差し出す。
「何?」
「プレゼント。開けてみてよ」



「これ…、手袋?」
「いやさ…ジルちゃん、訓練でタコが出来てるの、気にしてたから…今日くらいはさ」
目を丸くして見ると、えへへ、と笑う。
「まあ、僕は頑張りやさんの手、好きだけど」
うつむいて、唇を尖らせる。
うれしいやら、くやしいやら、泣きたいやら。ついでに腹が立って。

――こんなの、ヒキョウよ。

きっ、と顔を上げると、伸ばしっぱなしの黒髪に手を伸ばす。



「いっ、いたいいたい!」
「こんな頭で、舞踏会に出るつもりなの!?」
首に巻いていた水色のスカーフで、ぎゅっ、と手早く縛ってしまう。



「あー…考えてなかった。ありがとうー」
ほら、そんな風に君は素直だから。

「…ありがとう。嬉しい。」

ぽつり。
消え入るような小さな声だったが、伝えたいことは伝わったらしい。
レースのあしらわれた水色の長手袋をはめたジルに、手が差し出される。
「それじゃあ、行こうか」
くすり、と目を細めて、手を重ねる。

「ええ、遅くなっちゃったけどね」



――月は昇り、夜はまだまだ続きそうだった。
inserted by FC2 system